活動状況〔 研究会報告 〕

【第64回 研究会開催のご案内】(2015年度第1回)



日時:2015年6月21日(日)14時30分~16時30分
場所:桜美林大学淵野辺PFCキャンパス304号室

司会:平田 光弘(中央学院大学)

【発表】
第1発表 14:30~15:30
〔発表者〕 柏木 理佳(嘉悦大学)
〔報告テーマ〕「独立取締役の監査監督機能-日中比較を踏まえて-」
〔討論者〕 吉田 幸一(名城大学)

第2発表 15:40~16:40
〔発表者〕 青木 崇 (愛知淑徳大学)
〔報告テーマ〕「経営者の理念と企業の社会的責任活動」
〔討論者〕 明山 健師 (嘉悦大学)



【報告要旨】(2015年3月28日)

【第1報告要旨】〔報告者〕柏木 理佳(嘉悦大学)
第1報告テーマ 「中国民営企業における独立取締役の監査・監督機能-日中比較及び研修機関の役割を踏まえて―」 (報告要旨)
日本では社外取締役導入の義務化が見送られ、コーポレートガバナンスコードにて「研修方法の開示」のみが規定されたが、中国、英米では、独立取締役設置の義務化だけでなく、研修の受講までも義務化されている。とりわけ、中国では企業内外の研修、研修後の試験まで義務化されている。しかし、不正取引企業は増加している。
本論文は、民営企業における独立取締役の監査・監督機能、その有効性を高める研修内容の実態を解明し、その実効性があるのか明確化する。 まず、91社の民営上場企業の監査委員会の調査では、政府の関与が少ない業種では、独立取締役の監査機能があり、一任されている代わりに、家族が構成として関与していることが明らかになった。ほとんどの業種で監査委員会における独立取締役の監査能力が発揮できてないことが明らかになった。
日中の独立取締役へのアンケートでは、日中ともに独立取締役の監査・監督機能の弊害となる構造問題があり、中国は、日本と異なり、研修時に監査・監督機能の役割の説明はあるが、研修に政府の関与があり、実効性の高い研修内容ではないことが明確化された。
また、日本と比較すると、独立取締役が社会的責任を追及されることが少ないことが、監査や監督に対する責任の意識が低いという行動要因につながっている。
89社の優良企業は、61社の不正取引企業より、取締役に占める独立取締役の比率が高く、独立取締役は経営者の不正取引抑制効果があると思われる。しかし、究極の所有者構造の民営企業においては、その抑制効果はみられなかった。
法律による責任の明確化、証券監督管理委員会、証券取引所の不正企業への権限の強化が必要である。
また、中国には日英米のような第三者による研修機関はなく、証監会の指導により実施している。政府主導の研修では、独立取締役の監査・監督機能は実効性の高いものにはなりにくい。第三者機関による研修実施が必要である。


【第2報告要旨】〔報告者〕青木 崇 (愛知淑徳大学)
第2報告テーマ「経営者の理念と企業の社会的責任活動」 (報告要旨)
本報告の目的は持続可能な発展を目指した経営の根底をなす経営理念と社会的責任活動の関係について考察し、経営理念を従業員と共有し、社会的責任活動として経営実践していくための位置づけを明らかにすることである。
一般に警衛理念とは経営者が企業運営についていだく信条・哲学・経営観を指す。経営哲学、経営信条、経営思想、行動理念、指導原理などの名称で呼ばれている。企業理念は企業の信条であり、企業活動の原点、原動力、最高基準になるものを意味している。経営者がいだく自らの経営理念は構成員が共有し、実行しなければ意味をなさない。
稲盛和夫は幼少期から西郷隆盛の思想に触れ、『南洲翁遺訓』に大きな影響を受け、自らが従業員に説こうとしているフィロソフィの原点がここにあるとして、1966年、社長就任を機に、西郷隆盛が信条にしていた「敬天愛人」を京セラの社是として定めている。トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎の「日本人の頭と腕で自動車を造る」という理想はトヨタ自動車が掲げる人材育成の理念である「モノづくりは人づくり」に直結している。
本報告の共通点は3点ある。①自社のあるべき姿を構想し、確固たる企業理念に基づく価値観から経営ビジョンや中長期経営計画を決めていること、②自社の意識改革と企業体質とが変革し、企業理念に基づく価値観を経営者と従業員とが共有し、同じ方向で経営を行っていること、③人材育成の充実により、経営者と従業員のコミュニケーションがとれ、ベクトルを合わせた経営実践を行うことができることにある。
本報告の含意は2点ある。明確な経営理念を実践していくために経営理念を受け継ぐ経営者と独自の経営展開によって、企業が一体となって新しい価値観を共有していること、経営者の価値観と企業全体が相互に作用しあい、それが組織化し、共有すれば、新たなイノベーションの発展につながり、企業競争力の源泉になる。