活動状況〔 研究会報告 〕

【第61回研究会】(2014年6月22日(日))

〔総合司会〕
金山権氏(桜美林大学教授)

第1報告 14:00-14:50
〔報告者〕
吉田 敦氏(明海大学専任講師)

第2報告 15:00-15:50
〔報告者〕
辻井清吾氏(駒沢大学仏教経済研究所研究員)

第3報告 16:00-16:50
〔報告者〕
岩井清治氏(桜美林大学名誉教授)

〔討論者〕
(第1報告)
山内清史氏(神奈川大学国際経営研究所客員研究員)
(第2報告)
吉田幸一氏(名城大学スポーツ・文化後援会顧問)
(第3報告)
廉 玉丹氏(桜美林大学学生センター国際学生支援課)


【報告要旨】(2014年6月22日(日))

【第1報告要旨】〔報告者〕吉田 敦氏(明海大学専任講師)
本報告は,本来的な意味での研究成果の発表を目的としたものではない。すなわち本報告では1965年と2013年の日本の貿易主要相手国,両年の対アメリカ輸出入,同対ドイツ,同対中国,同対韓国,同対台湾,同対タイ,同対オーストラリア,同対サウジアラビア,同対アラブ首長国連邦,同対インドネシア,同対マレーシアの,合計46の日本の貿易関連の表(1ヶ国当たり2ヶ年度,輸出と輸入の計4表)を提示した。
しかし平素報告者は,これらを担当講義において「教材」として用いており,その為データの出典も『数字でみる日本の100年改訂第5版』(2006年,矢野恒太記念会)及び『日本国勢図会2014/15年版』(2014年,同上)という2次資料である。
つまりFD(ファカルティ・ディベロップメント)で言われているところの「学生主体型授業」を実践するべく,報告者はこれらの表を学生達に配付し,グループ・ワーク(意見交換をしながらのデータ分析)をやらせ,最後に分析結果を発表させるという授業をしばしば行っている。
本報告の理想的な様式としては,研究会出席者各位にこのようなグループ・ワークを実際にやって頂いてその感想を御聞きする,というものであった。しかし報告時間の関係で,表を提示し,それらから判明する知見や,上述の様な授業を行っている旨を述べるに止めた。
報告者は,本報告を元に論文を作成し,『学会報』第11号へ投稿予定であるが,その際にはこのようなタイプの「学生主体型授業」の導入前後の成績分布の差異等の分析を,主たる研究課題とするつもりである。


【第2報告要旨】〔報告者〕辻井清吾氏(駒沢大学仏教経済研究所研究員)
・「持続可能性」という概念が初めて提起され,国際社会の重要な課題として認識されたのは,1984年~87年国連賢人会議「環境と開発に関する世界委員会」(WCED・委員長Ms.G.H.Brundtland:略称ブルントランド委員会)が,87年7月委員会報告書をまとめ,同年9月国連総会で承認された「Our Common Future」(邦訳:『地球の未来を守るために』)において,「人類は,開発を持続可能なものと能力を開発する。持続的開発とは,将来の世代が自らの欲求を充足する能力を損なうことなく,今日の世代の欲求を満たすことである。」と明記されたのが,発端である。
・国連が主催した持続可能な社会の実現に関する主要な国際会議として,1992年・国連環境と開発に関する国際会議(UNCED:,リオデジャネイロ)(略称:地球サミット),官民一体化による初の国際会議。
現在に至る環境と開発に関する基本的・全般的な枠組みを,地域別・国別Agenda21として設定。10年毎の見直しとして,2002年ヨハネスブルグ,2012年リオデジャネイロにて開催。
1997年・気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3:京都)「京都議定書」を採択。2008~12年間のCo2排出量の定量的削減義務を定めた,2000年・国連ミレニアムサミット開催。国連ミレニアム目標を決定。
2015年迄の開発目標として8項目を決定,国連各機関と各国は共同して実行中。2014年・国連総会で,ポスト2015開発アジェンダを決定へ。
主点に,極度の貧困と飢餓の撲滅,飲料水の改善,初等教育の完全就学を達成,乳幼児死亡率の改善,感染症対策を主とする保健医療向上,環境の持続可能性確保等を目標に提起している。
・開発と環境を主点とした「持続可能性」を,長期的観点に見れば,正に現実に直面する気候変動,生態系等環境破壊,人口急増を背景の緊要な関連政策・活動の実施等が日常問われており,深刻かつ複雑な状勢へ自らが如何に行動すべきが今後の問題と言えよう。


【第3報告要旨】〔報告者〕岩井清治氏(桜美林大学名誉教授)
経済活動,企業経営の国際化,海外市場の拡大,海外各国のビジネスマンとの交流促進等々に伴って求められるグローバル人材養成に大学教育はどのように応じられるか,その方向性をどのように求めたらよいのか,が本報告のねらいである。テーマに入る前に大衆化趨勢と雇用の多様化に対するわが国大学教育の課題を概観し,増加する非正規社員に見られるしごと能力を学ぶ場の喪失に大学がどう対応できるか,さらに教養教育が知識習得教育に偏重している点を見直し,「知識の教授」以外に「する・できる能力」,いわゆるスキルを習得させる場としての大学教育拡大の必要性を訴えた。特にグローバル人材能力として強く求められるプレゼンテーション能力訓練,さらにあらゆる面で求められる積極性,積極的に振舞える能力の習得訓練がなされているか,それらが現在求められるグローバル化への課題として国際的に求められていることを指摘した。
その上で,それらの課題に対する今後の大学教育が基本的に採用すべきものとして,次の2点を提案した。一つは,従来からの大学教育の主要な教育方法である「講義授業」の「ゼミナール・演習・フィールドワーク授業」への比重の移行である。もともと多くは90分続く講義授業が,大学カリキュラムの主要な柱であり,担当者の研究テーマと強く関連する重要な教育の場であることは間違いない。ただその一方で,受講する学生にとっては,ほとんど受身的な“耳学問の場”となりがちとなり,グローバル能力の柱,積極的表現力を習得する場としての機会が少なくなっている事が重要である。この両者を折り合い,受講者の学習・研究活動を求める演習型授業を増やすという提案である。第2は,従来の外国語教育を知識習得型授業からスキル習得型授業へ,とくに“喋る能力”の習得を目指す授業への比重の移行についてである。大学教育における外国語会話能力を,ただ喋る能力としてだけで見るのではなく,喋る能力の増加から外国語能力を拡大強化,蓄積できるという外国語教育の基盤・土台としての機能に注目したいのである。グローバル人材が求められるものとして知識としての古典的背景,文化的背景,さらに哲学的知識が考えられるが,それらの習得は先ず話す能力を習得した後で特に海外ではある一定のコミュニケーション能力の習得後になってはじめて習得すべき課題とする方法でなければ,グローバルな社会では容易には受け入れてもらえないのではないか,の提案である。